第1章①:現代の「息苦しさ」の正体 ―― 脳化社会という檻

「最近、どうも息苦しい」
そう感じたことはないでしょうか。
ふと気づくと呼吸が浅くなっている。夜、布団に入っても脳が昂ぶり、なかなか寝付けない。
あるいは、地面を踏みしめているはずの「足の裏の感覚」がどこか遠く、自分が宙に浮いているような心許なさを覚える……。
もしあなたがこうした違和感を抱えているなら、それは決してあなた個人のメンタルの弱さではありません。
それは、人類が二十万年かけて積み上げてきた「進化」の、ある種の行き止まりに直面している証拠かもしれないのです。
脳化社会という檻

解剖学者の養老孟司先生は、この事態を「脳化社会(のうかしゃかい)」という言葉で言い当てました。
脳化社会とは、一言で言えば「人間の脳(意識・論理・システム)」が作り出したものが、現実のすべてを覆い尽くしてしまった社会のことです。
私たちが暮らす都市、複雑な法律、あるいはポケットの中のスマートフォン。養老先生は、これらすべてを「人間の脳の構造が外側に投影されたもの」であると喝破しました。
そこにあるのは、計算可能で「ああすれば、こうなる」という効率性だけの世界です。
しかし、私たちの「身体」は、本来そうした計算通りにはいかない「自然」そのものです。
いま、この「脳が作ったシステム」と「ままならない身体」の間に、修復不可能なほどの深い溝――「バカの壁」――が生まれているのではないでしょうか。
「この連載は、書籍化を目指して準備中の企画原稿を、先行して公開する試みです。
皆様からの感想という『刺激(免疫)』をいただきながら、より深い一冊に練り上げていければ幸いです」


