② 2500年前に「知」の大爆発が起こる
現代人になってからまだ20万年
この地球上に最後に登場した人類は、他の動物ほど五感「眼(視覚)・耳(聴覚)・鼻(嗅覚)・舌(味覚)・身(触覚)」が優れていなかったので外敵から身を守るために洞窟で暮らし、食物を得るために火を起こすことや道具を使うことを考え出した様だ。
効率よく食物を得るためにさらに考えるので脳はどんどん大きくなり他の動物よりも五感が劣る分、知能を発達させる道を選んだとされる。
養老孟司先生によると、人類は現代人になってまだ20万年しか経っておらず、さらにこの10万年間の人類の脳の大きさはほとんど変わっていないという。【YouTube公式 養老孟司先生「森とは何か】
だから、クロマニヨン人の子供を現在の小学校から学ばせれば我々と同じ大人になるのだそうだ。
つまり、人類はその間、宇宙の法則の中で自然界の一員として他の動植物たちと共存し急がずに歩んで来たことになる。
ソクラテス、孔子、老子、釈尊が同時期に登場する

それがいまから2500年前つまり紀元前500年前後に中国やギリシャ、インドでは「知の大爆発」が起こっている。
ソクラテスが生まれ、孔子、老子が生まれ、釈尊が生まれ、およそ人間が考えることの全てがこの時代に登場しているという。
なぜ、「知の大爆発」が起こったのかというとその少し前に人類は貨幣を発明したことが発端だとされる。
貨幣を発明したことでそれまでの物々交換から貨幣を用いた等価交換がはじまり便利にはなったが、代わりに金がモノを言う時代もはじまることになり、人々はこれまでにない様々な主義主張を唱えだし彷徨う中で、人の道を説く知の巨人たちが登場することになる。
人類だけが持つ「同じ」が等価交換を生む

現在、世界最古の貨幣(金属貨幣)と考えられているのは、紀元前670年頃にアナトリア半島(現在のトルコの一部)のリュディアで発明された「エレクトロン貨」だと言われるが、それが各地に広まりそれまでの物々交換から貨幣経済へと人類史が変わる大転換期が起こった。
貨幣の誕生で金がモノを言う世の中になり人々は生き方を見失った中で新しい思想が登場した。
貨幣誕生がもたらした脳化社会のはじまり

中村元先生の計算によると、釈尊は紀元前463年~紀元前383年に実在した人物だとされる。(原始仏典を読む/中村元)(p58)
また、参考にした「NHKこころの時代/ブッダの人と思想」は書籍にはなっていないので、放送分から要旨を書き起こすとともに、中村元先生の著書「原始仏典を読む」から学んだことを引用しながら書いていきたい。
金がモノを言う時代のはじまり
仏教が興る以前のインドは、各地に農村の村落を中心とした共同体があり、そこで古くからの伝統を受けて階位的な秩序を守りカースト的な身分区別を守って暮らしていたとされる。
ところが貨幣が誕生してからの時代になると諸般の経済活動が盛んになり貨幣経済が進展した。
それ以前のインドでは貨幣はなく物々交換だったので大転換期が起こったことになる。
そして、人はお金を大切にするので金がモノをいう時代になってしまった様だ。

「人が金を持ち富んでいるならば、富裕であるならば、その人は最下層の隷民つまり低い身分の出身であろうとも、そこへ王族でも、バラモンでも、庶民でも、労働する人々でも、みんな集まって来て、それでお辞儀をして、彼のために気に入るような言葉を述べる」と文句が残っているとされる。(NHKこころの時代/ブッダの人と思想/われ一切世間に違わず)
貨幣誕生で生き方が変わった
なんとこれは今の時代を当て擦るような文句で、逆に言えばこの時代から金がモノを言う世の中がはじまり今も変わっておらず進行中だということだ。正しく、金は魔物そのものだ。
貨幣を誕生させたことで人類は脳で考えだした世の中「脳化社会」の道を歩むことになるが、脳化社会については後で述べたい。(脳化社会は養老孟司先生の思想「唯脳論」)
都市の誕生
そして、貨幣経済が進展すると交通便利なところに人々が住み着くので都市が現れ、都市を中心として新しい文明が展開されて行ったとされる。
そして、私工業も発達し商業も盛んになるとそれらが組合を作り、組合の指導者が社会的指導者になっていた様だ。
当時富裕になった社会的に有力な人々を「グリハパティ」(家の主)と呼ばれ、漢訳仏典では、『居士(こじ)』とか、それに組合の一番偉い人を『長者』と呼ばれていたとされる。
これらはみんな経済的な覇者であり、そういう人を中心にして新しい文明が開かれ、盛んになると古い時代の階級制度は崩れだした時代が釈尊在世の社会情勢の様だ。
余談だが、どうして日本では死んだ人(男性)の位牌の下に「〇〇〇居士」などという戒名が書かれているんだ?と疑問が湧いたが、これから書いて行く中でそれらは解消したいと思う。