脳化社会とはあなた

釈尊の教えは思想

㉜ 人工物の都市で暮らす あなた のことです。

 お陰様で海外含めたくさんの方に拙稿ブログをお読みいただき深く感謝するとともに恐縮しております。
 今回は、「脳化社会」をもう少し説明して欲しいとリクエストがあったので書くことにしました。

養老】「都市化するということは自然を排除するということです。脳で考えたものを具体的に形にしたものが都市です。自然はその反対側に位置しています」(養老孟司『超バカの壁』)

 つまり、人工物だらけの都市は人間が意識的につくったものなので脳(意識)の産物であり、そこで暮らす我々は脳の中に住んでいる様なものだと養老先生は指摘している。
だから、脳化社会とは「都市化社会」となる。
そして、自然はその反対側に位置しているが、都市化によってどんどん自然が無くなってしまったのが現在の日本社会だと言っている。当然、我々自身も自然であるということになるのだが。

脳で考えた人工物とバーチャルで暮らすから感覚が機能していない

 扉画像と同じものを右に掲載したのでご覧いただきたい。

 実はこれ左側が精密機械の基盤で、右がニューヨークの街を上空から撮ったものだ。まったく同じに見えないだろうか。
その通りで、拙稿「アート(芸術)は生活ストレスの解毒剤」で養老先生の解説を載せたが、
 
【養老】「皆さん方は脳みそを見たことがないでしょうが、原理は簡単で神経細胞がつながっているだけです。そして神経細胞の状態は1であれば興奮しているし、0であれば休んでいる。(中略)
ただし、回路として機能するためには、0と1の仕事になる。
つまり、コンピューターというのは、われわれの脳みそを真似して作っているんですね。
ですから、理屈できちんと物を考えて、決まった手続きでやることは、いずれコンピューターに必ず置き換わるんです。人間の立ち入る世界ではもうありません。」(ヨコハマトリエンナーレ2017)

この様に我々の脳の中がこの基盤の様な回路になっているということになり、それをそっくり形にしたものが都市で、その都市を行き来する人やモノは回路の電気信号そのものだということになる。

【養老】「(都市に住む人が自然を排除しようとするのは)感覚を通して世界を受け入れないからです。意味を持った情報を通して世界を理解するんですね。だから意味のないもの、分からないものを徹底排除しようとするんですよ。自然に意味なんてないからね。都市の中の公園は、完全に意味を持った人工物です」(養老孟司『世間とズレちゃうのはしょうがない』)

これを読まれ、「まさに自分はこの状態だな」と感じた方もいるのではないだろうか。

都市化生活で体調不良になる?

都市化の中で暮らすとどうなるのか?
「なんか体の調子が悪い」と病院へ行くが原因がわからず…を繰り返す人が多いと言われる。
SNSでも体調不良を投稿したくさんの人が心配しても、本人は次の日になれば何事もなかったかのようにいつもの様にSNSをやっている人、これはよく目にする。
また、歩いている人の中にも何処へ行こうとしてるのか行動が読めない、彷徨ってる様な歩行をしてる人もいる。
ママチャリに乗っていても周りを見ておらず自分の世界で乗っているから危なくて仕方ない。
自動車事故でも、「よく覚えていない」と言う人がいる。
これらはもう脳化社会の典型で、感覚(五感)が機能してないからおかしな行動をしている人だという。
大変危険なことだが、周りにたくさんいるので注意しなければならない。

自分の中に感覚としての「自然」を取り戻せるか。

【養老】「それはそう簡単な話じゃないですよね。結局、世界全体がそうなってきているわけで、ひとりでじたばたしても仕方ない。だから僕は、国全体で「参勤交代制度」を取り入れたらいいんじゃないかって提案しているんです。「一定期間は都会で過ごして、一定期間は田舎に行く」って決めちゃうんですよ。「「みんな、体の声が聞こえなくなっている」(PRESIDENT Online2023/04/26) 
(参勤交代とは、都市と地方を一定期間ごとに住むこと)

【養老】「コロナになって、そういうことが自然と出てきていますよね。これまでずっと東京は流入超過だったけど、今は出る人の方が多くなった。それぞれがひとりでに、よりバランスがとれるほうに動いているんだと思います。」

 都会に住む子どもは人工物の中だけで暮らしているので、遊ぶ場所もなくゲームばかりやっている。
昔は、「虫取りに行ってくる」だったのが、今やスマホなどでゲームばかりが遊びになった。
養老先生は、「大人がそういう世界を作ってしまったんだから。それをさかさまにするのは難しいですよね。」と指摘している。

さらに、養老先生は、
【養老】「なぜ僕が子どもの頃から自然に触れることを勧めるかっていうと、そうでない世界はいくらでもあるからなんですよ。だから子どものうちからコンピューターのことを学ばせようっていうのは余計なお世話なんです。人間関係の付き合いだってそう。大人になってからいやでも学ぶんですから、子どものうちからやらせる必要はないんです。」

富裕層は精神的に病まない?

 養老先生が、「都市では、うつ病のような心の病にかかる人がとにかく多くなった」と指摘するのは、自然に触れず感覚(五感)が機能していないからだという。
また、お金持ちつまり富裕層は精神的な病になる人が比較的少ないという。
その理由は、富裕層本人たちは気が付いてなくても、軽井沢、南箱根、伊豆、房総その他自然あふれる各地に別荘を持っていたりして、定期的にそこに行っており、海や山に触れている。
さらには、休みの日などにゴルフに出かければ森で一日過ごすことになる。そして、健康に良いモノも食べられる。からだという。
 確かに、富裕層は元気そうに思えるし、心身ともに不調に陥りやすいのは富裕層以外の一般国民かも知れないと痛感した。
 これは社会問題、政治問題でもあるのだが、そうは言ってもすぐ変わるわけがないので、富裕層ではない私も自分なりに工夫し少しでも自然に触れる時間を作ろうと考えている。


 養老先生は、自然から遠ざかり、「感覚」を軽んじる現代社会に警鐘を鳴らし、都市の人が田舎で暮らすことを提唱して来てるが、「田舎に暮らせればいいが、生き物と暮らすことも、そんな感覚を取り戻すことに近い」という。
我が家の三毛猫師匠をもっと大切にするか・・・

一応、「脳化社会」について、簡単にまとめてみた次第です。