なぜ、現代社会は息苦しいのか――第1章③:情報の家畜 ―― 脳にハックされた現実

脳化社会に生きる

スマホ病-情報の家畜

現代の私たちは、朝から晩までスマホを手放せません。
指先一つで世界中のニュースを知り、知りたいことはAIが即座に答えてくれる。

一見、万能感に満ちた生活ですが、養老孟司先生はこうした状態を、痛烈な言葉で表現されています。
それは、人間が自らをシステムの管理下に置く**「情報の家畜」**と化している状態です。

皮肉

スマホ開発者のスティーブ・ジョブズ(Apple)が、自分の子供たちにiPadiPhoneの使用を厳しく制限した実話があります。
理由は、中毒性への懸念リアルな会話の重視からです。
この他、ビル・ゲイツ (Microsoft)も子供が14歳になるまでスマホを持たせませんでした。
ティム・クック (Apple)は、「自分の甥にはSNSを使ってほしくない」と公言しています。

デバイスを生み出した当本人たちが、そのリスクを最も警戒していたという事実です

「わかっている」という名の檻

家畜と化した現代人 

家畜と野生動物の違いは何でしょうか。
それは「予測不能な自然」の中で生きているか、それとも「管理された安全なエサ」を食べて生きているかです。
現代人の食べる「エサ」は、ネット上の整理された「情報」す。

バカの壁のエピソード

養老先生がよく語られる、ある大学でのエピソードがあります。
学生たちに出産の生々しい記録ビデオを見せた時のことです。
女子学生たちがその圧倒的な光景に言葉を失う中で、ある男子学生はこう言い放ったそうです。
「あ、これはもう知っています。保健体育の教科書で読みましたから」(バカの壁より)
これこそが、情報の家畜が陥る最大の罠です。
彼にとって「命が生まれる」という、本来は血の匂いや叫び声を伴う、予測不能で生々しい身体的体験が、教科書の数行の「情報」に置き換わってしまった。
脳に情報が入力された瞬間に「終わったこと」になり、現実の重みが消えてしまったのです。
これを養老先生は**「バカの壁」**と呼びました。

SNS・AIという究極の「飼育箱」

 いま、この家畜化をさらに加速させているのがSNSAIです。
SNSのアルゴリズムは、私たちが心地よいと思う情報(エサ)だけを差し出し、自分とは違う意見や「ままならない他者」を視界から排除します。

 身体を伴わない「意識だけ」の繋がりは、他者の痛みを感じるブレーキを壊し、時にネット上の集団リンチのような暴走さえ引き起こします。
また、最短距離で「正解」を出すAIは、人から「試行錯誤」という、身体を動かして悩むプロセスを奪っていきます。
 効率を追い求め、脳が作ったシステムに従順であるほど、私たちは「情報の家畜」として優秀だと評価される。

 しかしその時、私たちの「生身の感覚」は、どこへ行ってしまったのでしょうか。

宇宙の実験場としての「不合格」

 私は時折、この状況を宇宙的な視点で考えてしまいます。
自然界において、これほどまでに「感覚(五感)」を捨て、仮想の記号(情報)に熱狂し、互いに傷つけ合う種が生き残れるのでしょうか。
いまも世界で起きている戦争を目の当たりにしています。
 私たちの住むこの地球が、宇宙の生命がどこまで「脳」の暴走に耐えられるかを試す実験場だとしたら、今の私たちは「不合格」の判定を突きつけられる寸前かもしれません。

三毛猫師匠は自然

 窓の外を網戸越しに眺める三毛猫師匠が風の匂いを嗅ぎ、昨日の雨で少し湿った地面の感触を確かめています。
 師匠にとって、この世界は「教科書」でも「データ」でもなく、常に新しく、ままならない、未知の塊です。

情報の海に溺れ、呼吸が浅くなっていることにさえ気づかない私たち。
家畜としての安寧を捨て、もう一度「野生の感覚」を取り戻すにはどうすればいいのか。

第1章の締めくくりとして、私たちは自らの首にかかった「電子の首輪」の重さを、いま一度自覚する必要があるようです。

書籍化に向けて準備中の企画原稿です。
皆様の感想が、本をより良くする免疫(刺激)になります。
次回、第2章からは、この檻を抜け出すための「ブッダの智慧」についてお話しします。)

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